2025年6月、富山で開催された「文化財保存修復学会」にて、承欣が携わった【木造仁王像の保存修理とPR活動】についてポスター発表を行いました。
舞台となったのは、高知県香南市のまきでら長谷寺。太平洋を望む山の上にのお寺に伝わる木造仁王像は、江戸末期(嘉永7年・1854年)の銘を持ち、長年山門に安置されてきた貴重な信仰の対象であり、地域の宝です。
4年にわたる修理の中では、よしだ造佛所や各専門分野が知見を持ち寄り、協議され、構造補強はもちろん、過去の修理痕や素材の違いに丁寧に向き合い、調査すると共に、「痕跡を生かす保存修理」が進められました。
なぜ修理現場でPRを?
今回の発表の主題は、「修理事例」ではなく、それと並行して行った現場でのPR(Public Relations)活動です。
PRというと、商業的な広告や宣伝のように捉えられることも少なくありません。でも、私たちが目指し、実践しているのは、双方的なコミュニケーションプロセスです。文化財におけるPRとは、“伝える力”で人と文化財の距離を紡ぎ直す営みであるということ。
たとえば、
- 修理工程の一部を公開する参加型企画
- 修理の進行に合わせて地域住民と情報共有する執筆活動
- 仏像の背後にある物語や歴史を、SNSやメディアを通じて伝える工夫
さまざまな媒体や人との交流、企画の立ち上げを含め、一貫してPR活動していくことは、とても地道な道のりです。でも、こうした小さな「双方向のやりとりの積み重ね」を通じて、文化財や、それを守る人や場に新たな関心を呼び、地域の誇りや未来へのまなざしへとつながっていったことを、出来うる限りの客観的な数値を用いて、発表しました。
暖かな声に、背中を押されて
発表会場では、文化財修復の専門家だけでなく、メディアの文化財関連部署の方、教育に携わる方も足を止めてくださいました。
「文化財分野にも、これからはPRが本当に必要だと思います」
「やりたいけど、必要だと思うけど、できない。でも、やってる人がいるってすごく有難い」
「修理の現場から発信することに意味がある」
そんな前向きで、温かなお声を多く頂けたことは、本当に心強いものでした。
文化財PRとは、“未来への橋をかけること”
文化財PRの活動は、ただ過去を守るだけではありません。
それは、文化財の存在が「今ここにある意味」を問い直し、未来にその価値を手渡す橋をかける作業だと思っています。
そしてその橋を、誰にどんなふうに渡していくのか――
PRという視点は、文化財分野でもっともっと、生かせるのではないかと感じています。
これからも、現場にいながら発信していく両輪を大切にしながら、現場に根ざした取り組みを続けてまいります。
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